ベトナム報告(最終回)

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ベトナム国・麻しん(はしか)ワクチン
技術移転プロジェクト・終了報告 第5回

北里研究所  馬 場 建 一

本プロジェクトは06年7月より、ベトナム国ワクチン生物製剤研究・製造センターが、新設の麻しんワクチン製造所においてWHO-GMPに適合した麻しんワクチンを年間750万ドーズ製造できる能力を獲得することを目標として4年間の計画で開始して、10年3月で終了した。プロジェクト開始以来、北里研究所として最大限の努力した結果、技術移転は無事にできたと考えている。

 4年間の経緯は、06年度は、新施設の立ち上げ最優先課題として取り組み、07年度は最終製造工程及びその関連部門の専門的技術の移転を完了するとともに、小スケールにて製造及び品質管理技術を確立でき、人に投与する臨床試験用サンプルを供給することもできた。それに引き続き、08年度はシードウイルスからの原液製造工程から始まり最終製造工程及び品質管理技術を確立し、WHOの品質基準に適合し、人に投与できる品質の製品を製造できようになる目標を完遂することができた。

 最終年度である09年度は、過去に移転した製造及び品質管理技術を総合的に活用して、大量の製造技術を移転することであり、プロジェクト目標である750万ドーズのベースでワクチンを製造できることを検証することであった。同時に、ベトナム国が構築したGMPがWHO-GMPに準拠したベトナムGMP(VN-GMP)に適合し、ベトナム国国家検定機関に承認されることであった。ベトナム国が大量製造できる技術能力を有することが確認でき、かつ、ベトナム国側が09年6月から9月にかけて実施した臨床試験において高い安全性と有効性が確認され、12月に販売承認を取得した。従って、プロジェクト目標の2つの指標を十分に達成し、ベトナム国ワクチン生物製剤研究・製造センターがワクチン製造業として機能しはじめたことを証明することができた。ここで、このように事業が進んだか考えてみると、日本国内作業と現地作業にあった。北里研究所は、製造及び品質管理の実務を効率よく指導し、技術移転の実効を挙げるため、また、WHO-GMPの要件を満足するために適切な品質保証体制を確立することが重要であると考え、そのひとつの手法である基準及び手順の書類化の充実を図るために、専門的技術を活かした教材が必要であった。そこで、本プロジェクトでは、JICAの理解を得て、初年度よりプロジェクトのステップ毎に国内作業として教材及び現地ナショナルスタッフを経由して国内から指導し、年間計画及びバリデーション進歩状況に応じて必要となる教材をタイムリーに作成(日本語または英語)し、ベトナム語に翻訳した後、それらを現地の指導に活用することができた事だと思う。

 最後に、小生がこのような大事業に従事できたのも、ひとえに三本木農業高校で学んだことが大きいと、私は感謝しています。(北里研究所品質部門・部門補佐、昭和43年度畜産科卒)