学芸科学コンクール金賞
「学芸科学コンクール金賞」受賞について
この度は、旺文社主催:学芸科学コンクールに「われら花咲爺さん~食卓に花を咲かせましょう~」のタイトルで研究論文を応募し、自然科学分野で金賞を受賞することができました。コンクールへの応募作品数は、全国の中学・高校を合わせて約2千の作品の中で最高の賞を頂いたことになります。これも一重に、三農同窓生の実績と期待に支えられ、
様々な面からのご協力により達成できたものと思い、この場をかりて御礼と感謝を申し上げます。
これら活動の内容は、ストレス社会にありながら癒しを求める現代において、その役割を担う室内用の観賞植物の少なさを背景に、「室内花の開発」に焦点を当てプロジェクトを行った結果を報告したものです。この研究の課題は、「室内の日照不足をいかに解消するのか」です。室外で育てる花壇用の草花や鉢花を室内で育てると、光合成量が低下し生育不良や、光を求めて草丈が伸びすぎる徒長現象が発生し、草花が本来持っている生育機能を発揮できません。着目したのが、第6の植物ホルモンであるブラシノライドの生成抑制剤「ブラシノゾール」の活用です。この植物ホルモンを抑制すると、葉の内部で感じる機能が敏感になり、光感受性が高まると報告されています。ただ、室外植物へのブラシノゾール処理では、太陽光の強日射により、光感受性の高まった葉は葉焼けを引き起こしてしまい、植物への経済的な目的としての応用は難しいと思われていた物質です。それを、日照不足の室内で草花の生育に役立てようと考えたものです。
この実験は、独立行政法人理化学研究所より「ブラシノゾール」の提供を受け、当研究所の指導・協力のもと実施することができましたが、最初は失敗の連続でした。セントポーリアに処理した場合は、室内環境でも光感受性が高まりすぎたために葉焼け現象を引き起こし生育不良となり失敗。アスターで実験した時は、日長反応が鈍り従来のものに比べ開花期が大幅に遅れるという結果でした。消費者のニーズに応える開発の難しさに直面した瞬間です。その後、日長反応に影響されず葉焼け現象を引き起こしづらいパンジーで実験したところ、室内環境でも徒長せず、綺麗に開花させることに成功しました。処理による開花期間は3週間ですが、室内花用としての利用であれば十分な期間です。開発された草花は、食卓に彩りを添えたいという願いを込めて「テーブルパンジー」と名付けました。
室内花は種類が少ない上に、その鉢花の代表である胡蝶蘭やカトレアは、高額であり一般家庭では、滅多に利用する事ができません。そのため、「テーブルパンジー」をリーズナブルな価格(300円)に設定し販売したところ、またたく間に完売できました。開発から商品化へ向けた取り組みも現在行っております。
今回の受賞は、新しいものを開発し販売したことだけが評価された訳ではないと思います。農業の福祉的な活用を研究テーマとし、一般市民のニーズを捉え、最先端研究機関との連携により新しい技術開発の糸口を見えだし、また失敗しながらも成功に辿り着くことができました。生徒たちの「純粋な思い」と「着実な行動」と「観察力」が受賞に結びついたものだと感じております。現在は、ケイトウやミニバラでも室内花開発に成功し、「テーブルフラワー」シリーズとして、三農オンリーワン商品としての販売を目指しております。
最後に、これまでの研究や報告は、生物工学研究室の前任者である木村亨先生をはじめ、研究に携わった生徒達の思いを引き継ぐことによって達成されたものであり、紙面をかり感謝申し上げ結びといたします。